
リビングが廊下になる。床面積ではなく、家族の通過線を測る
図面の廊下面積が0㎡。LDKはそのぶん広くなり、移動も短い。数字だけを見ると、かなり気持ちいい間取りです。
ところが玄関から洗面へ行く人、洗濯物を運ぶ人、2階へ上がる人、夜中にトイレへ行く人を図面上で歩かせると、全員がソファの前を横切っていた——そんなことがあります。
廊下を消したはずなのに、LDKの中へ“見えない廊下”ができている。この記事で見つけたいのは、そこです。
廊下は通るだけの場所です。でも、通るだけの動線をリビングへ移せば、ソファ前、ダイニングチェアの後ろ、キッチンの背面が通路になります。畳数は増えても、家具を置ける面積まで増えるとは限りません。
廊下ゼロを目標にしない。仕事のない廊下だけを減らします。
音と視線を切る、玄関と生活空間を分ける、扉同士の衝突を逃がす、夜間や将来の移動を支える。こうした仕事がある廊下は残す。一方、同じ場所へ行くためだけに長く伸びた通路は短くできないか疑います。
そして廊下を削る案では、必ずLDKへ家族の通過線を引きます。線がソファ・椅子・キッチンへ集中するなら、廊下は消えたのではなく、居室へ移っただけです。
廊下に「なぜ必要?」と聞くと、3つの仕事が見える
廊下は、ただ部屋をつなぐだけではありません。図面を見るときは、廊下一本ずつに面接します。「君は毎日、何の仕事をするのか」と。
1|通す
玄関、洗面、トイレ、階段、個室をつなぎ、家具や家事を邪魔せず人を通す。
2|離す
寝室とLDK、トイレと食卓、玄関と生活空間の間に距離や曲がり角をつくる。
3|受け止める
扉の開閉、着替え、荷物運び、将来の手すりなど、部屋の中で受けたくない動作を引き受ける。
この3つのうち一つも説明できない廊下は、短くできる可能性があります。反対に、たった半間のホールでも、玄関からリビングを隠し、トイレの音を遠ざけ、扉の衝突を防いでいるなら、面積以上に働いています。
廊下への3つの質問
「何畳もったいない?」の前に、次の3問を聞きます。
- この廊下を一日に誰が、何を持って通るか
- なくした場合、その通過線はどの部屋へ移るか
- この廊下が今、音・視線・温度・扉の何を区切っているか
赤ペンで線を引くと、“見えない廊下”が現れる
廊下のない間取りでは、部屋から部屋へ直接移動できます。移動距離を短くできる一方、LDKなど別の部屋を通過しなければならない配置も生まれます。LIFULL HOME’Sも、廊下がない場合は他の部屋を通る動線へ注意が必要だと説明しています。
そこで、間取り図をコピーして赤ペンを持ちます。朝の身支度、洗濯、帰宅、ゴミ出し、夜間のトイレ。暮らしの線を一本ずつ引きます。
廊下ゼロ案の「赤ペン通過テスト」
実在住宅の図面ではなく、確認方法を示す概念図です。
ソファ
廊下の面積は減っていても、くつろぐ場所が家族全員の通過点になっています。
特に見たいのは、ソファの前とダイニングチェアの後ろです。図面上では空いて見えますが、人が通るなら家具の余白になります。LDKが20畳でも、中央を複数の動線が横断すれば、自由に置ける家具は減ります。

減らしたいのは「長さ」ではなく、仕事のない区間
廊下は多いほど安心でも、少ないほど効率的でもありません。区間ごとに、残す理由と削る理由を分けます。
| 廊下・ホールの状態 | 残す価値が出やすい理由 | 見直すなら |
|---|---|---|
| 玄関とLDKの間 | 宅配・来客の視線を曲げ、外気が生活空間へ直接入りにくくする | 長い廊下ではなく、短いホールや壁一枚で仕事を代替できるか |
| トイレと食卓・寝室の間 | 出入りの視線、流水音、においへの心理的な距離をつくる | 収納、曲がり角、扉の向きで短くできるか |
| 個室前の短いホール | 複数の扉をまとめ、LDKの家具を置ける壁を守る | 扉を一か所へ集めすぎて衝突しないか |
| 行き止まりの長い廊下 | 採光、収納、家族動線など別の仕事があれば成立する | 部屋の入口を寄せる、収納を兼ねる、終点の部屋を動かす |
| LDKを横切る代替動線 | 専用廊下は不要でも、居室内の通路幅は必要になる | ソファ前を避け、LDKの端へ通過線を寄せる |
トイレとリビングが近い間取りについて、LIXILも音やにおいへの配慮を紹介しています。廊下は万能な防音材ではありませんが、扉・壁・収納・曲がり角を組み合わせる余白にはなります。
廊下を消すと、LDKの壁が“扉だらけ”になることがある
個室、洗面、トイレ、収納、階段へLDKから直接入るようにすると、廊下は減ります。その代わり、LDKの壁へ扉が集まります。
扉が増えると、開閉前のスペースが必要です。テレビボード、ソファ、食器棚、本棚を置ける連続した壁も短くなります。廊下を削って増えたはずの居室面積が、扉の前の何も置けない場所へ変わることがあります。
家具を置ける壁の長さ、椅子を引く余白、扉の開閉、家族の通過線を除いたあとに、くつろげる面積がどれだけ残るかを見ます。

空調は「廊下があるか」より、どこまで同じ空気にするか
廊下を区切れば、LDKだけを空調しやすい場合があります。一方で、廊下側が寒くなり、部屋を出た瞬間の温度差が大きくなる家もあります。廊下をなくして空間をつなげれば、温度差を抑えやすい可能性はありますが、空調する範囲は広がります。
ダイキンも、リビング階段など上下階がつながる空間では冷気が流れ込み、暖房効率へ影響する可能性を示し、間取りに合った空調計画の重要性を説明しています。つまり「廊下ゼロなら暖かい」「廊下があれば省エネ」と名称だけでは決まりません。
「冬と夏、この家はどこまでを同じ空気として冷暖房する想定ですか?」廊下、洗面、階段、吹き抜け、建具の開閉まで含めた答えを聞きます。
20年後、廊下は“移動の保険”になることもある
廊下を減らすと移動距離を短くできるため、将来にも有利な場合があります。ただし、短ければ何でも通りやすいわけではありません。曲がり角、扉の幅、手すりの下地、家具の出っ張りまで一緒に見ます。
国土交通省の長寿社会対応住宅設計指針では、廊下等へ手すりを設けるか、設置できるようにする考え方が示されています。これはすべての戸建てへ同じ間取りを義務づける説明ではありません。それでも、廊下をゼロにする前に「将来、どこへ手を添えて歩くか」を考える材料になります。
同じ面積で「廊下ゼロ案」と「短いホール案」を比べる
廊下を残すか消すかは、言葉で議論しても決まりません。僕は延床面積と部屋数を変えず、次の二案を頼みます。
- 廊下ゼロ案:LDKから各所へ直接アクセスする
- 短いホール案:トイレ・洗面・階段などの入口を短い緩衝帯へまとめる
比べるのはLDKの畳数ではありません。ソファ前を通る人数、家具を置ける壁、玄関からの視線、就寝後の音、扉の衝突、空調範囲です。
間取りを決めない。同じ面積で、通過線の違う案を比べる
暮らしの条件を整理して、住宅会社の別案を見る
くふうイエタテカウンターは、家づくりの進め方や予算・要望を整理し、条件に合う参画住宅会社の候補を紹介する無料相談窓口です。「LDKは広くしたい。でも、ソファ前を通路にしたくない」のような矛盾した希望も、相談前に言葉にしておくと提案を比べやすくなります。
相談メモ:「廊下ゼロ案と短いホール案を、家具配置と通過線まで入れて比べたい」
2026年8月28日の公式店舗一覧では、栃木・群馬・埼玉・千葉・山梨・岐阜・静岡・愛知・三重・大阪に店舗掲載があります。予約前に最寄り店舗と施工対象地域を公式サイトで確認してください。
紹介先は参画する住宅会社の中から選ばれます。店舗、予約枠、紹介可能な会社、施工対象地域は変わる場合があります。
よくある質問
廊下をなくせば、建築費は必ず下がりますか?
必ずとは言えません。延床面積を実際に減らせるのか、居室へ振り替えるだけなのかで違います。壁、建具、構造、設備、仕上げも総額へ影響するため、「廊下○畳を削れば○円」と単純には決められません。同じ仕様・同じ延床面積で見積もりを比べます。
小さな家ほど、廊下ゼロが向いていますか?
限られた面積を居室へ回しやすい点は魅力です。ただしLDKが玄関・洗面・階段・トイレの交差点になるなら、通過用の余白が必要です。小さい家ほど、短いホール一つで複数の問題を解ける場合もあります。
リビングが通路になるか、どう確認しますか?
間取り図へ、玄関→洗面、洗濯→収納、個室→トイレ、キッチン→ゴミ出し、玄関→階段の線を引きます。ソファ前や椅子の後ろへ線が集中したら、入口をLDKの端へ寄せる案か、短いホール案を見ます。
廊下を収納や本棚に使えば無駄ではありませんか?
仕事を持たせる方法として有効です。ただし収納扉を開けたときに通行できるか、本棚の奥行きを引いても必要な幅が残るか、窓や照明をふさがないかを寸法で確認します。
廊下幅の正解は何cmですか?
家族構成、扉、曲がり角、運ぶ家具、将来の介助で必要寸法が変わります。法律・性能基準・住宅会社の標準も関わるため、一つの数字を万能解にはしません。実際に使う人と物を置いた有効幅で設計担当へ確認してください。
まとめ|廊下は、面積ではなく「家族の衝突」を引き受ける場所
廊下のない家は、居室を広くし、移動を短くできる可能性があります。問題は廊下をなくすことではありません。消した通過線が、どこへ移るかを見ないことです。
最後にもう一度、廊下へ聞きます。誰を通すのか。何を離すのか。どの動作を受け止めるのか。仕事がなければ短くする。仕事があるなら、わずかな面積でも残す。
間取り図の廊下が0㎡でも、ソファ前に赤線が3本走っていれば、そこが廊下です。逆に、短いホール一つでリビングの落ち着き、トイレの気まずさ、玄関の視線をまとめて消せるなら、その廊下はかなり働いています。
削るのは廊下ではなく、仕事のない移動。これが、僕の結論です。

